[レポート]「価値づくりのレンズ:ポスト・デジタル時代の経営論理」- PLAZMA 2019 KANDA
DA部の兼本です。
2019年7月16日(火)から17日(水)の2日間、神田明神ホールで開催された「PLAZMA 2019 KANDA」に参加しました。
PLAZMAは弊社パートナーでもあるトレジャーデータ社が主催するデジタルマーケティングの先進事例を紹介するイベントで、毎回さまざまなゲストスピーカーが登壇しています。
今回は、こちらも弊社パートナーであるLooker社が出展したことをきっかけに参加したのですが、思いもかけず素晴らしい講演を拝聴できました。
ブログでの公開をご快諾いただきました藤川氏ならびににトレジャーデータ社 堀内氏に感謝をしつつ、2日目の基調講演となる一橋大学 副学長補佐 藤川佳則氏の「価値づくりのレンズ:ポスト・デジタル時代の経営論理」についてレポートいたします。
講師紹介
一橋大学 副学長補佐(国際交流)
一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻 MBAプログラム・ディレクター&准教授
藤川 佳則 氏(略歴)
サービスマネジメントとは?
- サービスマネジメントは経営学の一分野として、ここ30年くらいで発展してきた分野
- 元々はいわゆる「モノづくり」に対するサービスを対象としていた
- 現在はすべての産業をサービスの観点で見たときに、どうやって価値を創造するのかを明確にする取り組みをしている
TechCrunchにTom Goodwin氏が寄稿したこの⾔葉をご存知でしょうか。
In 2015, Uber, the world’s largest taxi company, owns no vehicles.
Facebook, the world’s most popular media owner, creates no content.
Alibaba, the most valuable retailer, has no inventory.
And Airbnb, the world’s largest accommodation provider, owns no real estate.
Uberはタクシー業界を破壊したわけではなくて、タクシーがつかまらないという現行サービスの課題を解決することで既存のサービスを置き換えました。
これが新しい「レンズ」によって置き換えられるということです。
そしてこれらの企業に共通しているのは、組織の中に経営資源を持たない企業が価値をつくり出しているという点です。
価値づくりの「レンズ」
バリュー・チェーンはマイケル・ポーターが1985年に提唱しました。
このフレームワークでは「ヒト・モノ・カネ」を持つ企業がさまざまな活動を経て価値のある製品をつくり、その対価を得ることを連鎖の終点としています。つまり、現状のバリュー・チェーンにおいて価値を作るのは企業であり、また対価を得た後のモデルがなく「空白」です。
ところが現在では、経営資源を持たない企業が価値をつくりだし、さらに「空白」のエリアでも価値がつくられています。Facebookやairbnbは、コンテンツの拡充には経済学でいう「マージナルコスト」はほぼゼロに近づいています。彼らはバリュー・チェーンという「レンズ」をはずし、新しい価値をつくる「レンズ」に掛けかえることで、新しい価値をつくる機会を見出したといえます。
SHIFT、MELT、TILT
さて、現在の世界においては3つの大きな変化が起きています。
SHIFT
- 世界経済のサービス化が進み、労働人口はサービス産業が中心になっている
- GDPも同様の傾向があり、すでに2/3がサービス産業によるもの
GapMinderというツールがあり、1800年代からのGDPや人口の推移などさまざまな指標を可視化できます。
GapMinderでさまざまなデータを俯瞰すると、世界各国のサービス産業が大きく伸びていることがわかります。
また日本は高齢化社会と言われていますが、日本のみならず、北半球の多くの国で同様に高齢化が進んでいることもわかります。
MELT
- 世界経済全体で業界の境目がなくなりつつある
- Appleや富士通など、以前は製造業を⽣業としていた企業がサービスを提供している
- AmazonやGoogleなど、これまでサービスを生業としていた企業が製品を提供している
TILT
- 世界はフラットだ!(The World Is Flat: A Brief History of the Twenty-first Century / Thomas L. Friedman (著) / 2005年) (和書リンク)
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まだまだ凸凹(Redefining Global Strategy: Crossing Borders in A World Where Differences Still Matter / Pankaj Ghemawat (著) / 2007年) (和書リンク)
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傾いてるよ!(Global Tilt: Leading Your Business Through the Great Economic Power Shift / Ram Charan (著) / 2014年) (和書リンク)
これまで経済活動は北半球を基準として、地球は「フラット」あるいは「デコボコ」だという主張がされてきましたが、今後はお金の動きもビジネスの動きも人の動きも、北緯31度以北の北半球が中心ではなく、南半球が中心になっていくとラム・チャランは主張しています。
2022年には世界の中間層が貧困層を上回り、そのほとんどが北緯31度以南で生まれ育つ人たちという予想もあるので、今後私たちがビジネスを拡大するには彼らにも価値を提供できなければいけません。
さて、今この瞬間、みなさんはどんなレンズをかけて自社をみていますか。
「価値づくり」のこれまでとこれから
- LENS1 グッズ・ドミナント・ロジック
モノかサービスか。企業が価値を創造。 - LENS2 サービス・ドミナント・ロジック
モノもサービスも。企業と顧客が価値を共創。 - LENS3 マルチ・サイド・プラットフォーム
「価値共創」の相手を複数に。「価値獲得」の相手も複数に。
これまではLENS1を使った価値づくりだけでよかったですが、これからはLENS2やLENS3をうまく使い、複数の異なる顧客サイドを巻き込む「マルチサイド型」の価値づくりが重要です。
例えば、アディダス社はサッカーボールを製造販売するだけではなく、ボールの動きをトラッキングするサービスを提供することで、サッカークラブやサッカーリーグとのビジネスに拡⼤する機会を模索しています。
このように、新たな価値づくりの「レンズ」に掛けかえる重要性はますます大きくなりつつあります。そしてその可能性は、データの時代において、われわれの無意識の言動が捉えられるようになると、さらに高まります。 私たちが意識できる知識や⾏動は全体の5%程度、対して無意識は95%を占めると言われています。
膨大な「無意識」をデータとして扱え、「未知の窓」を拡大することが新しい価値づくりの「レンズ」を見いだすためのキーとなります。
まとめ
じつは弊社も最近IT企業という枠を超えて、Developers.IO CAFEというカフェ事業を展開しています。
まだまだ実験店舗で弊社メンバーは日々改善の毎日ですが、ありがたいことにさまざまな方面で興味を持っていただき、モバイルオーダーやウォークスルーなどの新しい購買体験のお役に立っていると感じています。
なかには実際にコラボレーションが実現するケースもあり、弊社にとってのお客様と弊社の技術を組み合わせることで、私たちも価値共創の一助を担っているのかなと、藤川氏のセッションを拝聴しながら嬉しく思った次第です。
これからも既存の枠にとらわれず、さまざまな「レンズ」を見出せるように、またお客様の無意識から価値を見いだすお手伝いができると嬉しいですね。